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TalesWeaver/OriginalSideStory~ 公式シナリオとは無関係です。
※Episode1のエンディングのネタバレ要素が一応含まれています。
また、ゲーム『TalesWeaver』以外での要素も取り入れているのでTW本編に忠実なSSではありません。
閲覧の際は以上の点をご注意・ご理解の上でお願いします。
*言霊~Episode1-after[another time]
ここにはもう何も遺されない。
だから、ここはとても静か。
淀んでいた筈の空気は新しい風によって澄み始め、その流動は彼らの歩み。
静まった部屋に聴こえるいくつもの足音がある。
私はその足音の主の姿を目視する事は出来ない。
けれど、見える。
赤くて長い髪をまとめた青年が居る。私はあんな髪型って結構好き。
あれを引っ張れば、彼は驚いて周りの子達に聞いて回るだろうから。その様を想像するだけでも面白い。
彼の隣を歩いている女の子もしっぽみたいな長い三つ編み。あの三つ編みを結んでいるリボンを奪って、
端の方から編みこみをほどいていったら、あの子はどんな顔をすると思う?
前を歩いている女性がワンピースの女の子の手を取って歩いていく。
私がありったけの力でワンピースの子にしがみついたらどうなるかしら。二人で慌てて手を引っ張り合いしたり、地面を蹴ってみたり、とにかく大騒ぎね。
その後ろの子にする事は、もう決めてる。あの子の被ったベレー帽、
突風でもないのにふわふわ遠くまで飛んでいっちゃったらどう? きっと大事な帽子だし、
あの子はベレーを持った私を走って追いかけてくるに違いない。
こんな私が鬼ごっこをするには、人の帽子を盗るしか方法がないの。
後尾を歩く人に目をやると……これまた丈の長いコートを着ている。
歩に合わせて上手く裾を引っ張ってやれば後ろへ一気にすってんころりんね。
それだけじゃ終わらせない。転んだと同時に眼鏡を取って床に置かせてもらって…
「メガネメガネ」。楽しみ。
黒いマントと黒い長髪。彼を見ると、少し哀しくなった。
何故だろう……今の私には解らない。私は彼に何が出来るかしら。
マントが急に真上になびいたり、髪に突然沢山のヘアピンがついたらそりゃあ面白い事になるでしょうね。
でも、マントには装備が絡み付いていて一気には上げられなさそうだし、
私もそんなに沢山ヘアピンを隠し持てるわけじゃない。
だから、彼には私の好きな大きい花のヘアピンを頭のてっぺんにつけてあげよう。前触れも無く。
最後はブロンドの髪の男の子の足。ひっかけてあげる。
彼は列の先頭で何もないところにつまづいて転んでみんなに笑われる。
彼はドジを踏む私を助けてくれた時もあったけど、私はお世話になってる人にだって手加減なしなの。
覚悟してね、ルシアン。
待って。歩くのが速過ぎない? そんなに急いでいるの? 追いつけない。
いいえ、追いつけないどころか、それとは全く事情が違う。
私が視える範囲から彼らが遠ざかっているだけで……私は一歩として動けてはいないのだった。
彼らが来る。ここに来る。
待って。私に気付いて? 私はここに居る。
私の目が、まるでレンズをはめこんだだけのように一点しか見ることが出来ない。動かない。
私の口が、まるでレコードを復唱でもしているように同じ言葉しか話すことが出来ない。動けない。
違うの、これは私じゃない。本当の私じゃない。
これがこの世界の私なの? これがこの物語の私なの?
違うの。私はこんなのじゃない。私は……
私は知ってる! 私には話すことがある! 伝える事がある!
だから待って。
私が私を取り戻すまで、私が私になれるまで、気付いて。行かないで。
こんな私なら、この場に居ないも同然だ。
この部屋に居る限り、私はこの役目を終えられない。
この部屋に居る限り、この世界の私は私の思う私ではない。
この部屋に居ない私は、きっとこの世界にも居られない。
それでも伝えられる事がある……お願い気付いて。私に気付いて。行かないで!
伝えなくちゃいけない…伝えなくちゃいけない…たとえ変えられない未来でも。
ここまで来た彼らに、私が与えたのは短いレコードと、世界から零れたひとしずく。
そして、行ってしまう。
行かないで、ここに居て。それが叶わないのなら、せめて本当の私を探して。
私はここに居るから、もう一度会いに来て、本当の私に会いに来て。
間に合わなくても、私は……伝えたい。私一人の自己満足の為に、私一人が許されたい為に。
どうして動けないの。どうして思う言葉が出せないの!
「はああッ!」
目が覚めた。書棚に座ってうとうとしていたみたいだ。
夢の中で出せなかった声の勢いが目覚めた瞬間に噴出した。
書庫の踏み台に座って本を読んでいたランジエが私の声に驚いている。
肩を一気にすくませて、きょろきょろ辺りを見回しているのが面白い。
いたずらするつもりはなかったのだけど、しょうがない。
ランジエは前髪をかき上げて、また本に目を落とした。
肩をすくませた勢いで戻った数ページを開きなおして、続きを読み始める。
私は、ランジエの読んでいた本を後ろから読ませてもらっていたんだ。
一人で読んでもいいけど、人に見つからないようにこっそり読まなきゃ通りすがった誰かが宙に浮いてめくられる本を見て驚いてしまうだろうから。
本を読むだけでそんなに逐一驚かれたり奇声をあげられたりではたまったものじゃない。
さて、ランジエの肩越しにそっと本を覗き込む。
「ランジエ。肩口に校内噂のいたずら幽霊が居る」
「……? 場所を改めるべきですか」
「さぁ。いたずらされない保障はない。なんなら借りていって部屋で読めばいい」
「この本は、ここで読もうと思っていたので」
ランジエは本を閉じて書棚に収めた。
では、ご忠告ありがとう。と一言残してランジエは書庫を去っていった。
本の続きを読みそびれた私はランジエに話しかけた男を不満げに見た。
「やあ、ベンヤ? 本を読もうなんて珍しいな」
「解ってて邪魔したの?」
「好からぬ事を企んでいたに違いない」
「……そうね。そうかもしれない」
本の中に干渉してはいけない。
読者は自分が登場人物になっている本でも、結末を操る事は出来ないものだ。
私は今、ここに居る。
「ねえ、ヨシュア」
「何用だ、ネニャフルのいたずら幽霊」
「さっきランジエが読んでいた本は、なんというタイトルだったのかしら?」
――さっき閉じられたあの物語は、一体なんという本だったのかしら。
...
*TW Epi1をクリアした人であれば、このテキストがテイルズウィーバーを機軸にしたパラレルだと解っていただけるのではないかと思います。
舞台は4LEAF版ネニャフル魔法学院、設定はテイルズウィーバーとなってます。
モバイル4LEAFから引っ張ってきたエピソードもあるかも。僅かですがベンヤとルシアンがそれです。
丁度いい時期に思いつけたので、このテキストをテイルズウィーバーエピソード1完結記念として納めます。
よく見ると(さほど見なくても)夢オチなのが気になります……
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