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RagnarokOnline/OriginalSideStory~ 公式シナリオとは無関係です。
*end-主よ、憐れみ給え
私はその北に寺院をかまえた大通りに降り立ちました。
降り立ったその姿はまぎれもなく私、桃色の髪を肩で切りそろえた少女でした。
石畳で舗装されているのに歩きなれない道を細々と歩きました。
赤い橋、赤い門。
その先には少しの草原と森が広がっていました。
見慣れない生き物を見ました。魔物だと認識して、思いっきりナイフを振り下ろしました。
歩いて、歩いて、戦い歩いて、鬱蒼と茂りゆく森に不安を抱くと街へ戻ります。
そんな小さな旅を何度も何度も繰り返しました。
いつだったか、故郷のこの街がフェイヨンという名の街だと知りました。
私がいつも歩くこの森は、『フェイヨンの迷いの森』なのだと直感的に知りました。
自分の生まれた街を理解すると、今度はこの街以外の他の街も見たくて、私は迷いの森を戦い歩きました。
やがて体力は落ち込み、私は茂みに座り込んで休みました。
人通りは少なく、暗く枝葉の生い茂るこの森に、一際目立つ白いローブの女の子が歩いてくるのが見えます。
茂みの中に隠れた私を見やった彼女が、
「ヒール!」
という掛け声を放つと共に私は一瞬の光に包まれたのです。
回復された体力を見て、私は通りすがりの彼女が私に回復魔法をかけてくれた事を知りました。
慣れないウィンドウにお礼の言葉を打ち入れました。
初めて、この世界で言った言葉でした。
「ありがとう…」
彼女は、私の手には負えない狼を棍棒で叩きながらハートの気持ちを返してくれました。
私は、その姿に感動を覚えました。
清楚な姿と反するようにも見える彼女の力強さ、そしてその人を癒す優しさに。
狼と戦いながら礼に応える、当時の私から見るとそれはそれは強かった彼女に、憧れを抱いたのです。
私は地図を広げました。
森を抜け、砂漠を歩いた先の草原に首都『プロンテラ』があります。
プロンテラには大聖堂があって、聖職を望み、その資格を持ち得た者に『アコライト』の位を与えてくれるのです。
私は、アコライトになりたいと強く思っていました。
あの時の彼女のように、戦い疲れた人に『ヒール』を唱えたい。
森を進みました。
どんどん茂っていく森に負けずに、どんどん歩いてゆきました。
一つのエリアを抜けるまでにたくさんの行き止まりを見ました。
何度も引き返し、別の道を探して、私は歩き続けました。
先へ進むたびに知らない魔物が辺りを徘徊しているのに怯える事もありました。
そうして進む中、急に森が開け、絶壁の下の海が見えたのです。
さっと目前に広がる青が私を元気づけました。
進むたびに見える新しい世界がある…
いつの間にか心で気付いていたその事実を、その頭で確信しました。
私は、旅を続けていきます。
人を癒す神の使いと成ることを志したその時から、それは決まっていた事だったけれども。
私はこの世界で『生き』ていくことを決心しました。
新しい色を、新しい空気を感じながら、たくさんの景色を横目に見ながら、私は首都へと急ぎます。
橋を渡り、首都へ。
砂漠を抜けて、首都へ。
目的の街へ近づくにつれて、森を抜けるまで殆ど見かけることのなかった旅人の姿が増えてきていました。
首都が近づいているのを、実感しました。
今まで、こんなに人が集まっている場所を見た事がありませんでしたから。
いっぱい人がいるなぁって、目を瞬かせながら、私はその後ろの門をくぐりました。
初めて見る白い街並み、やっぱり人がたくさんいます。
でも、私は今度ばかりは何もかまわずに大通りを歩きました。
大聖堂へ、急ぎました。
―神様、もうすぐ貴方の子が参ります。
…なんて、そんな高尚な思いはその頃はまだ抱いてはいませんでしたけれど。
私は神様から授かる力、『ヒール』の力が欲しかったのです。
もうすぐだって、どきどきしながら。
神様を讃えるその建物へと急いだのです。
疲れ果てたのです。
私は、この世界で何をしていけばよいのか解らなくなりました。
人を救うのには足りない力、守るための力はあれど、私にはもう守る人もそばにはいません。
今まで身に付けた力を、主に授かった力を、今、私は私の為だけに使っています。
人を、救えるようになりたくて。
でも、力が、足りなくて。
私は、強くならなくてはいけない。
この世界で『強くなる』という事は、それだけの数の戦いをこなしていく事。
やがては経験だけを求めて、無心に戦い続ける事になるのです。
及ばない力でも、自信をなくしても、私は守りたい人たちの居る場所へ残るべきでした。
でも…私の力は、必要とはされていないと感じたのです。
私の心は荒んで、悲しくて、どうしようもなくなって、私は、今以上の力を求めてその場を去ったのです。
戦うばかりの日々です。
主よ、貴方は見ていますか。
貴方の子は、戦っています。
無心に、戦い続けています。
志した道は戦いの中にどんどん消えて、薄らいでいくのが私自身にも解ります。
主よ、憐れみ給え。
これは、私がこの世界で生きる一日の中で最も多く口にする言葉です。
『主よ、憐れみ給え』
その言葉に意味はあれど、感情などこもってはいません。
『主よ、憐れみ給え』
その言葉が、私を守るのです。
無心に、無情に、放たれるその言葉で、主のお力に守られた私は魔物を倒して行きます。
主よ、憐れみ給え。
迷える子羊はとうにいません。
いつか、また、志した道へ戻れる日まで。
私は、この戦いの日々に身を置きます。
たとえ、かつて志した道へと戻っても、私は神の御使いとしてその名を連ねはしないでしょう。
穢れた魂で、堂々と聖職を名乗る事など私自身が許せません。
でも、授かった力は紛れもない聖職者としての力。
私は、授かったこの力で人を救います。
自らが認めた、自らで背負った罪を癒す為の、自己満足の、偽善の、癒しです。
―「戦いに疲れた戦士達を、どうか癒し給え」
―ブレスは、必要ですか?
―騎士様、どうかご武運を。
私の力を受ける彼らは知りません。
『ヒール』は偽善の心を持っていても効き目を現す『魔法』なのですから。
一度手に入れたその力は、心が穢れても手放す事は出来ません。
感謝の言葉を受けるのは心が痛く、しかし、とても嬉しい事でもあります。
誰かを守りたかったから。
誰かを救いたかったから。
誰かを癒したかったから。
それだけを思ったあの頃の私に、聖職者としての心が身に馴染むなんて思いもよりませんでした。
そして、その心を裏切る行為を自分に感じる事になるなんて、思いもよりませんでした。
主よ、私の信仰は独り善がりです。
主よ、貴方の子は穢れた心で生きて行きます。
主よ、私は無心な戦いを続けます。
主よ、貴方は何故、この言葉を救いの呪文として選んだのですか?
今一度、私は貴方に願いを託します。
絶望を感じるこの心で、祈りを捧げます。
同時に、私は戦いの中へと姿を消していくのです。
主よ。貴方の子は去りました。
今はただ、守られなかった世界の住人達を遠くから見るだけ。
私には神の与える力をもたらされても、神の与えるやすらぎを再現する力はなかった。
戦いに疲れ、強さに疲れを覚えた。
神々の子らはただ富と名誉を求める。
残された平和もわずかなノイズに壊されていった。
主よ。貴方は何を望みますか。私には貴方の声が聴こえない。貴方の姿が見られない。
主よ。貴方はどこに居ますか。天上の者。
それは世界を維持する電子を操るものでしたか。
貴方の維持する緑が大好きだった。
たくさんの町並みが私の心に残る。
置いてきた、僅かな友人達。
何も、出来なかった……
主よ、憐れみ給え。
どこに居るかも知らぬ子から。どこに居るかも知らぬ神へと。
キリエ・エレイソン。
その世界でだけ、それは意味を持ち力を開いた。
キリエ・エレイソン。
私を守る神の力。
全てを捨てて、空へ。
異国の大地を照らしたその空は、いつも私の目の届くところにあった。
神は、最後に空を見せた。
青い、電子の空。遠く、高く、それは弱者を寄せ付けぬ天空の都市に。
やっと会えた空から、私の心は舞い落ちたに違いない。
主よ。私の影を見守ってください。
貴方の目の届くところにある私の影を。
私が去った今、何も知らず祈る彼女を。
いつか降り立った桃色の髪の女の子。
あの日の彼女は闇を知らず、神を信じ、北へ。
過去を忘却する神よ、既に現実から離れた神よ、『私』の世界で力を振るう神よ。
貴方が与えた真実の試練は、彼女の魂を削いだ。
影は倒れても目を醒まし…無き空を見ていた。
*こういうテキストはなんていえばいいんでしょうか。
正直、書けるけど見せると「キモイ」テキストにしかならない文章ですね。
これが私のROの始まりと終わりでした。
私の最初のログインはbeta1、引退は課金後のジュノー実装後でした。
その後も何度かログインはしましたが、どうしても馴染めず戻ることは出来ませんでした。
自分のROの最後を締める文章として、このテキストを書かせていただきました。
最高の思い出をくれたラグナロクオンライン及び最低の体験をくれたガンホー社にこの思いを捧げます。
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