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*天上の喜び 〜07.01.06日記にて公開


 天上に喜びがあるからそれをいただいておいでと言われました。 みんなも私もつまらない日々を送っている時に、私がそんな喜びをもらえると聞いて嬉しく思いました。 私は勿論すぐさま空の向こうへ飛んでいきました。雲の上で、私は一人の男に出会いました。

「私の国は貧困に苦しんでいる。喜びを持って帰ればみんなで分けて刹那の苦しみから逃れる事が出来る」。

 私が喜びを持ち帰っても、それは私一人のものです。 私一人が生活がつまらないという理由で持ち帰るよりは、彼がみんなに分ける喜びを持ち帰った方がいい。
 私と一緒に喜びを散々探して、落ちていた一冊の本をようやくみつけて渡しました。 彼は何度も何度も礼を言って祖国へと戻り、そして私は何も得られなかったけれど充足感を感じながら家に戻りました。
 帰った先の家族は、私が喜びを持って帰ってこなかった事に失望しました。

「だけど、私が手に入れる筈の喜びは他の国で役立てられる事になったのよ」

 家族にそう教えて、私はニュース番組をつけました。 彼の国は貧困で、戦争で、沢山の死があって、喜びを譲った彼はそれを分ける間もないまま息絶えていました。 天上にある喜びはたった一つで、それが渡した人に使われなかった時はもう戻ってなんて来ないし 型紙だって見つからないから二度と喜びは作れないんだよと聞かされました。
 お前が持って帰って役立てれば、また次の人が復活した喜びを取りに行ったのに。
その人が終わったらまた次の人が、また次の人が、ああお前が譲ったばっかりに。
みんな絶望し始めました。つまらない日々を抱えた人が次々に倒れていきました。
何よ。飽食主義者。彼らは純粋に喜びを欲していたのに。どうしてそんな事を言うの。
私が良かれと思って譲ったものが、不幸の只中に奪われた、それは運が悪かっただけで私の行いは正しかった!  そんな主張も聞いてか聞かずか周囲の者は次々と絶望に身を引き裂かれました。
天上にあるという喜びを信じていたので。
私達は満たされている方だったのに、わがままだ、何くそ。
 怒りを覚え続けたある日、天上に武器があるからそれをいただいておいでと言われました。 つまらない日々に喜びが与えられなかっただけで絶望している人たちを思いとどまらせる武器を使いなさいと言われました。
 ああ。これがあの時喜びを手に入れた彼に与えられる筈のものだったんだ。私はそう悟り、初めて絶望を感じてうずくまります。 他の者が、「どうして取りに行かないんだ!またお前が選ばれたというのに!」
叫んで空へ飛び出し、いただいてきたものは教本でした。
「こんなものが武器になるわけがない」とその者を軽蔑した私に気付いたのか、 その者は「こうして使うんだ」とまた絶望を覚えた者たちに教本を振り上げました。
 沢山の人をはり飛ばして、殴り飛ばして、たたきつけて、全部が終わった頃、血がこびりついた教本を見て彼は言いました。

「この本は喜びと書いてある」

既に絶望に身を裂かれ教本に打ち倒され息を引き取った私には、その言葉はひどく難解なものに思えて どうでも、よくなりました。


・上手くいかないもんですよね。
最初に喜びを取って来いといわれた娘は自分が充足感で喜びを得た事に気づいてないですよね。
上手くいかないもんですよね。という話。